BYOOL BYOOL Bloggers
トップページ コンセプト トピックス ブログ HPリンク 世界の輪 私の逸品 BYOOL SNS
Vol. 141  ハンガリーからのメッセージ
福岡伸一を読む 〜『生物と無生物のあいだ』、『もう牛を食べても安心か』〜
 
 

X. 人の体は何故大きい、何故食べ続けなければならないのか

 

   シュレーディンガーは、「原子は何故それほど小さい」という問いにたいして、逆に「原子の大きさに比して、生物体はどうしてそんなに大きいのか」という問いを発する。何故、生物体はそれほど大きくなければならないか。この問いへの回答にこそ、生命の謎を解く鍵があるという。

   生命を構成する原子はランダムに動く(ブラウン運動)。つまり、原子は秩序なく運動する。他方、膨大な原子が集まって運動する場合には、そこに「平均」的な振る舞いが顕在化し、秩序が生まれる。原子の数が多くなればなるほど、この平均的な振る舞いが法則化される。一般に、平均から離れて例外的な撹乱運動をする原子の数は、平方根の法則に従う。100万個の原子があれば、その平方根は1000である。つまり、100万個にたいして、1000個の例外的な振る舞いが観察される。生命体はこの何億倍もの原子から構成されているから、例外的な振る舞い率は限りなく小さくなる。だから、生物体は秩序を維持するために、原子に比べて、途方もなく大きくなければならないのだ。これが物理学者シュレーディンガーの分析である。

   さらに、生物体は何故、動的均衡、つまり絶え間ない変化の中で秩序を保持できるのか。既述したようにシュレーディンガーは、熱力学のエントロピーの法則から、これを理解しようとした。増大するエントロピーを減らすために、負のエントロピーを吸収する。それが、物理学的に解釈した「食べる」ということなのだ。

「オペラハウス」

「マーチュアーシュ教会」

Y. 牛を食べても大丈夫か

 

   人は生きるために食べ続けなければならないし、タンパク質を摂り続けなければならない。動物性であっても植物性であっても構わないが、とにかくタンパク質を作るアミノ酸を構成する原子・分子の摂取が不可欠なのだ。

   狂牛病の症状が何によってもたらされるのかは分かっている。タンパク質が変形し、脳細胞が海綿状になると、いわゆる狂牛病の症状が現れ死に至る。人間の発症例としては、乾燥硬膜の移植による発症やニューギニアの食人種族(死人の脳を食べる習慣)における発症例が知られている。牛における発症も、狂牛病に感染した廃棄牛の肉骨粉の飼料が原因だということも分かっている。

   しかし、今になっても、感染のメカニズムがまったく解明されていない。異常タンパク質が増殖することから発生することは分かっていても、何を媒体として、どのようなメカニズムで感染し、増殖するのかがまだ解明できないのだ。この伝染病原体(タンパク質性病原体)をプリオンと命名したものの、病原体そのものの解明も、それが動物から人間へどのような媒体とメカニズムで感染するのかも、未解明のままである。プリオンという言葉だけが一人歩きしている状態だ。

   福岡の言う「動的均衡」に従えば、生命体を構成するタンパク質は常に創造と破壊が繰り返されている。あらゆるタンパク質にはそれと相互的に作用する相補性をもつタンパク質があり、それがくっついたり離れたりしながら、傷ついたタンパク質を取り除き、それを新しいタンパク質で置き換える営みが絶え間なく繰り返されている。そのメカニズムが効かなくなり、異常タンパクが正常タンパクに結合して蓄積していけば、エントロピーが危機的な状況になる。

   狂牛病のメカニズムは未解明だが、生体に取り込まれた異常タンパクは、分解されて消化器から血液に入り、体全体をめぐることになる。それが脳に滞留し、増殖するとしても、それ以外の部位が異常タンパクに汚染されていないという保証はない。だから、「危険部位だけを除去すれば安全」という判断には、何の科学根拠もない。あくまで便宜的な判断なのだ。

   草食動物に仲間の肉骨を食わせる、死人の脳を食らうという自然の摂理に反した人為的操作が、新しい病を発症させている。遺伝子操作も、自然の摂理に反することになれば、新しい病を発症させる可能性がある。それを知る上でも、異常プリオンの感染メカニズムの解明が待たれるところである。


盛田常夫 盛田 常夫

1947年
富山県高岡市出身
法政大学社会学部教授、野村総合研究所研究顧問を経て、ハンガリー立山研究所取締役社長

ブダペスト在住

盛田常夫のホームページ:
ハンガリーからのメッセージ
盛田常夫訳「コルナイ自伝」の国際サイト:
Korunai Yanoshu:MEMORIES
▲ トップに戻る | 
|    前に戻る    | 
 
猫 猫 猫


盛田氏の家に突然居座って
しまったネコの花ちゃん。
夜はガレージに
入れてあげるそうです。
(*画像クリックで拡大写真)

樹氷 樹氷 樹氷 樹氷


盛田氏はブダペストに
お住まいですが、
ブダペスト丘陵に連なる
小高いところでは、氷点下5度以下
になると、このような樹氷の
光景が見られるそうです。

ドナウ通信

ハンガリー在住日本人会会報
「ドナウ通信2008年新春号」

盛田常夫マラソン 

※盛田常夫氏は、昔からテニス、スキー等、スポーツ万能で、最近では毎年様々なマラソンに出場しています。
(画像クリックすると拡大します)

  |  ヘルプ   |  お知らせ   |  会社概要   |  お問合わせ   |  利用規約   |  プライバシー・ポリシー  |
(C) Copyright BYOOL, Ltd., All Rights Reserved, 2006