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DNAの発見と解明によって、生物学は大転換を遂げた。我々が中学生時代は生物学と言えば、動物解剖と植物観察だった。ところが、「DNAの二重らせん」の解明によって、生物学は分子生物学の時代へ突入した。これによって、宗教的な生命観とは明確に区別される科学的な生命観が打ち立てられた。「二重らせん」の解明によって、遺伝子が複製される仕組みが明らかになり、「生命とは自己を複製するもの」という新しい生命観が科学の世界に生まれた。
しかし、福岡はこの生命規定は十分でないという。福岡が着目したのは、忘れられた生科学者シェーンハイマーである。「生命とは動的均衡の流れ」という規定は、シェーンハイマーの研究にもとづくものだ。「二重らせん」の解明は1950年代初めだが、生命観のコペルニクス的転換とも言える「動的均衡の流れ」という概念は1930年代に、シェーンハイマーによって打ち立てられた。
もう一つ、興味深い生命観がある。「二重らせん」構造を解明したワトソンとクリックが生の研究に駆り立てたと記している著作である。量子力学の創始者の1人で物理学者シュレーディンガーが、隠遁生活に入って記した『生命とは何か』である。彼はこの著作で、「生物が食べることの意味」を解明しようとした。「人は何故、食べ続けなければならないのか」。この問いにたいする回答が、負のエントロピーという概念である。「生物は絶えずエントロピーを増大させつつあるが、そのまま増大し続ければ、死の状態を迎える(乱雑さが拡散・均一化するエントロピー最大の状態)。それを避けるために、食べることによって負のエントロピー(秩序)を取り入れるのである」。
これら三つの生命観は生命活動の本質的な部分を解明しており、相互に排他的なものではないが、総体的規定として一つを選択すれば、シェーンハイマーの規定がもっとも良く生命活動を表現しているというのが、福岡の持論である。
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