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Vol. 135  ハンガリーからのメッセージ
福岡伸一を読む 〜『生物と無生物のあいだ』、『もう牛を食べても安心か』〜
 
 

T. プロローグ

 

   たまたま茂木健一郎のトーク番組を見た。気鋭の分子生物学者、福岡伸一がゲストで、彼の持論に惹かれた。「生命とは動的均衡にある流れ」。急いでアマゾンで著作を調べ、とりあえず2冊を日本から取り寄せた。

   一般に理工系の人は文章がうまくない。それには理由がある。理工系の論文には文系のような冗長な言い回しや文学的な修飾語など不要だから、自然と文章は定型論理になり、文章力を鍛える機会がない。もちろん、文系学者の文章がうまいとは一概に言えない。読むに耐えない文章を書く人も多いが、一般論として理学系あるいは工学系の学者の文章は読めないことが多い。

   しかし、福岡伸一は例外中の例外。これほど筆の立つ理系の学者を知らない。とくに、『生物と無生物とのあいだ』は、短編小説を読んでいるような錯覚に陥る。2006年の科学ジャーナリスト賞を受賞したのも頷ける。

「鎖橋の表情」

「鎖橋の表情」

U. 三つの生命観

 

   DNAの発見と解明によって、生物学は大転換を遂げた。我々が中学生時代は生物学と言えば、動物解剖と植物観察だった。ところが、「DNAの二重らせん」の解明によって、生物学は分子生物学の時代へ突入した。これによって、宗教的な生命観とは明確に区別される科学的な生命観が打ち立てられた。「二重らせん」の解明によって、遺伝子が複製される仕組みが明らかになり、「生命とは自己を複製するもの」という新しい生命観が科学の世界に生まれた。

   しかし、福岡はこの生命規定は十分でないという。福岡が着目したのは、忘れられた生科学者シェーンハイマーである。「生命とは動的均衡の流れ」という規定は、シェーンハイマーの研究にもとづくものだ。「二重らせん」の解明は1950年代初めだが、生命観のコペルニクス的転換とも言える「動的均衡の流れ」という概念は1930年代に、シェーンハイマーによって打ち立てられた。

   もう一つ、興味深い生命観がある。「二重らせん」構造を解明したワトソンとクリックが生の研究に駆り立てたと記している著作である。量子力学の創始者の1人で物理学者シュレーディンガーが、隠遁生活に入って記した『生命とは何か』である。彼はこの著作で、「生物が食べることの意味」を解明しようとした。「人は何故、食べ続けなければならないのか」。この問いにたいする回答が、負のエントロピーという概念である。「生物は絶えずエントロピーを増大させつつあるが、そのまま増大し続ければ、死の状態を迎える(乱雑さが拡散・均一化するエントロピー最大の状態)。それを避けるために、食べることによって負のエントロピー(秩序)を取り入れるのである」。

   これら三つの生命観は生命活動の本質的な部分を解明しており、相互に排他的なものではないが、総体的規定として一つを選択すれば、シェーンハイマーの規定がもっとも良く生命活動を表現しているというのが、福岡の持論である。

『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)
『もう牛を食べても安心か』(文春新書)

盛田常夫 盛田 常夫

1947年
富山県高岡市出身
法政大学社会学部教授、野村総合研究所研究顧問を経て、ハンガリー立山研究所取締役社長

ブダペスト在住

盛田常夫のホームページ:
ハンガリーからのメッセージ
盛田常夫訳「コルナイ自伝」の国際サイト:
Korunai Yanoshu:MEMORIES
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猫 猫 猫


盛田氏の家に突然居座って
しまったネコの花ちゃん。
夜はガレージに
入れてあげるそうです。
(*画像クリックで拡大写真)

樹氷 樹氷 樹氷 樹氷


盛田氏はブダペストに
お住まいですが、
ブダペスト丘陵に連なる
小高いところでは、氷点下5度以下
になると、このような樹氷の
光景が見られるそうです。

ドナウ通信

ハンガリー在住日本人会会報
「ドナウ通信2008年新春号」

盛田常夫マラソン 

※盛田常夫氏は、昔からテニス、スキー等、スポーツ万能で、最近では毎年様々なマラソンに出場しています。
(画像クリックすると拡大します)

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