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Vol. 126  ハンガリーからのメッセージ
〜盛田常夫のハンガリー・政治経済コラム〜 電子政府下の役人天国
 
 

T. プロローグ

 

   ハンガリーに居住する外人にとって面倒なのは、役所関係の証明書の取得。滞在ビザ、労働ビザ、自動車免許、車両証明、税関にひっかかった小包の引き受け、健康保険証、警察関係の証明書等々。会社が代理手続きしてくれるものは良いが、会社が代理できないものは、自分でやる必要がある。一昔前(ほんの数年前)まで、滞在ビザをとるのはたいへんだった。KEOKという文字通り、「外国人監視国家中央局」という厳めしい名の官庁が、外人へのビザ発行を行っていた。中国人の大量移住などが契機になって、年々、提出書類が増え、最後には20種類の書類が必要になった。しかも、その書類を揃えて、KEOKへ行くのだが、何時行っても長蛇の列で、誰がどこの窓口に並んでいるのか良く分からない。何時間も並んだあげく、窓口で受付場所が違うと言われ、改めて別の窓口にさらに何時間も並んで泣いた人も多い。KEOKは旧体制時代の官僚主義の代名詞のような存在だった。
   1990年代の初めには、1年ごとのVナンバー車両証明更新、滞在ビザ取得、免許書き換えなど、すべての手続きを自分でやっていた。さすがにKEOK事務所の順番待ちが数時間になった段階で、手続き代理を商売にしている人に依頼した。代理人が朝6時にKEOK玄関前に並ぶ。そうすると、8時半に開く事務所で、1時間以内に手続きが受け付けられる。本人は9時頃に代理人と合流して、担当者から声がかかるのを待つだけで良い。今では外人駐在員の各種手続き代理をビジネスにした会社がたくさん出てきたので、多くのことを任せることができる。それでも、自分で手続きしなければならないものもある。
   2年前に免許証の更新で、2区の公証所に行った。公証所は日本の市役所、区役所である。オフィスを改装し、日本と同じように大部屋でオープンカウンターを並べ、番号札にしたがって、順番に市民の証明書発行事務をこなしていた。さすがにEUに加盟しただけのことはあると感心した。同じ事務所で、今度は車両証明書を更新する必要がでてきた。今、ハンガリー政府は「電子政府」を謳って、公証事務の迅速化と近代化を推進している。少し興味をもって、同じ事務所に出かけたのだが、その様変わりに驚いた。電子政府は名ばかりで、逆に昔に後戻りしているのだ。

「中欧最大のシナゴーク」

「中欧最大のシナゴーク」

U. マニュアル時代への後戻り

 

   インターネットで受付を予約できるというので、2週間先を予約した。それまで空きがなかった。しかし、とにかく行列しなくても良いというのは、ハンガリーでは信じられないことだ。さすがに電子政府を喧伝しているだけのことはあると思った。
   さて当日、ビザ(パスポート)、車両検査書類、旧車検証、ナンバープレートを持って、窓口に出向いた。ところが、担当者は「居住証明書」がないから、手続きできないという。確かに、ビザ取得の際に、居住証明書(lakc?m-bejelent?lap)をもらったが、細長い薄っぺらな紙なので、事務所の机にしまい込んである。今まで、誰にもこの紙の提示を求められたことはない(ハンガリー人はプラスティック製のカードを保有。なぜか、外人だけは紙)。2年前に同じ事務所で免許更新した時も、提示を求められなかった。「どうしてそれが必要なのか」と聞くと、「それなしでは、貴方がこの住所に本当に住んでいるどうかを確認できない」という。それはないだろう。2区の区役所は毎年、私に地方税と重量税の郵便振り込み用紙を送っている。電子政府ならすぐに分かることだ。ところが、担当者はとにかくその証明書の提示がないと、手続きできないという。翌々日もインターネット受付日だから、また予約すれば良いという。ところが、これはとんだ嘘だった。
   事務所から予約を試みたが、6週間先まで空きがない。そんなはずはないと思うのだが、それには理由があって、1時間に2名しか受け付けないから、すぐに予約が一杯になるのだ。インターネット予約日には、それ以外の事務を受け付けないから、なんとも悠長な仕事振りだ。
   仕方がないので、翌日10時半に公証所に出向き、順番待ちをすることにした。ところが番号札のボタンを押しても札が出てこない。何度も押していると、係員がもう午前中の札の発行は終わりで、次の発行は12時半からだという。「番号札が切れる?」。いったいここはどんな仕組みで動いているのか。しかも、次の番号札発行だという12時半は、まだこの事務所が昼食休みだ。いったい、2区の公証所はどうなったのだろう。
   少なくとも2年前はこうではなかった。広い大部屋のオープンカウンターで、番号札の発行制限もなく、連続的に市民に対応していた。ところが今はどうだろう。番号札は一定数だけ、1日2回あるいは3回に分けて発行する。オープンカウンターのある大部屋にはドアが取り付けられ、勝手に中に入れないようになった。電子パネルのスウィッチは切られたままで、係の叔父さんが番号を読み上げて、初めて中に入っていける。番号札の発券機を一日に数分間だけ動かし、電子パネルをオフにして、機械の代わりに人間が働いている。だから、順番を待つ市民の数より、受け付けと係員の人数の方が多い。こりゃいったい何だ。マニュアル時代への逆戻りではないか。こんなルールに従っていたのでは、何時手続きできるか分からない。だから、レセプションで日時を予約できないかと尋ねたら、6週間先になるという。「急ぐのなら(当たり前でしょう)どこの公証所でも手続きできるから」と、公証所の一覧表を渡してくれた。だいたい、自分の区の住人を他の区の公証所に送る感覚がどうかしている。
   仕方ないから、会社から11区の公証所に電話した。ここは昼食時も連続的に受け付けていて、待ち時間もそれほどないというので急行した。30分で順番が来た。2区の公証所と大違いだ。ところが、担当者が携えたCナンバー(C文字で始まる外人所有表示)を見た途端、ここでは手続きないという。中央公証所でしかできないのだという。それなら、何故2区の担当者はその肝心なことを言わずに些末なことに拘ったのか。2区には多数の外国人が居住していて、そのほとんどがCナンバーの車両を保有している。知らなかったでは済まされないだろう。


盛田常夫 盛田 常夫

1947年
富山県高岡市出身
法政大学社会学部教授、野村総合研究所研究顧問を経て、ハンガリー立山研究所取締役社長

ブダペスト在住

盛田常夫のホームページ:「ハンガリーからのメッセージ

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猫 猫 猫


盛田氏の家に突然居座って
しまったネコの花ちゃん。
夜はガレージに
入れてあげるそうです。
(*画像クリックで拡大写真)

樹氷 樹氷 樹氷 樹氷


盛田氏はブダペストに
お住まいですが、
ブダペスト丘陵に連なる
小高いところでは、氷点下5度以下
になると、このような樹氷の
光景が見られるそうです。

盛田常夫マラソン 
※盛田常夫氏は、昔からテニス、スキー等、スポーツ万能で、最近では毎年様々なマラソンに出場しています。
(画像クリックすると拡大します)
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