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〔第6回〕
ハンガリー立山研究所 代表取締役 盛田常夫さん
ハンガリー立山研究所 代表取締役 盛田常夫
 

今回ご紹介致します「BYOOLな人」は、「BYOOL Bloggers」のコンテンツ「Sharing the World」で、毎週エッセイをご紹介していますハンガリー在住の盛田常夫さんです。

盛田さんは、法政大学教授、野村総合研究所研究顧問を経て、現在、ハンガリー立山研究所取締役社長をなさっています。1978年に、ブダペスト経済大学客員研究員として、ブダペストに滞在し、以来、社会主義国家の研究を続け、関連書物の出版の他、数多くの翻訳本を手がけ、それ以外にも、政治・経済、スポーツ、芸術、書評など、実に幅広いエッセイを書き続けていらっしゃいます。

エリザベート橋とブダ城

余暇には、テニス、スキーをなさるなど、スポーツ万能でいらっしゃいますが、2004年から、毎年、マラソンやハーフマラソンに出場なさり、その強靭な筋肉質の手足を見ると、とても還暦を過ぎたお年とは思えません。映画や演奏会などの芸術鑑賞もお好きで、人生をエンジョイされている、まさに、“BYOOLな人”にふさわしい方であると思います。

盛田 常夫さん
1947年生まれ。富山県高岡市出身。
盛田常夫のホームページ: 「ハンガリーからのメッセージ
盛田常夫訳「コルナイ自伝」の国際サイト:
Korunai Yanoshu:MEMORIES

〔主要著作〕
単著: 『ハンガリー改革史』日本評論社、1990年
『体制転換の経済学』新世社、1994年
編訳書: ・チコシュ-ナジ・ベーラ『社会主義と市場』大月書店、1981年
・マーチャーシュ・アンタル『近代経済学の歴史』大月書店、1984年
・コルナイ・ヤーノシュ『反均衡と不足の経済学』日本評論社、1983年
・コルナイ・ヤーノシュ『[不足]の政治経済学』岩波書店、1984年
・コルナイ・ヤーノシュ『経済改革の可能性』岩波書店、1986年
・マルクス・ジョルジュ『異星人伝説』日本評論社、2001年
・コルナイ・ヤーノシュ『コルナイ・ヤーノシュ自伝-思索する力を得て』日本評論社、2006年

マーチュアーシュ教会


 

〔盛田さんへのインタビュー〕

盛田さんが東欧、特にハンガリーに興味をお持ちになったきっかけはどのようなことでしょう?

まったくの偶然です。大学紛争を経験した団塊世代ですが、あの紛争を経験して大学教員になった同世代の同僚たちは皆、一様にあの紛争は無意味だったという点で一致していました。ところが、この世代が教員になった1975年になっても、だらだらと紛争が続いているのが法政大学でした。結局、紛争を経験した若い教員たちが大学改革の先頭に立って、10年以上の時間を通して解決したのが、多摩キャンパス移転です。この息の長い改革の中で、途中の息抜きのために海外留学を選んだところが、ハンガリーだったのです。とにかく「息を抜かないとやってられない」、というのが本音でしたね。どこでも良かったのですが、たまたま政府交換給費生の枠にはまったので、飛びつきました。正確に、ヨーロッパのどこにあるのかも調べもしなかったです。日本語の専門書を50冊ほど送って、それをゆっくり読もうと考えていました。ということで、ハンガリーへの留学の動機は不純なものでした。

西洋美術館

ハンガリーの魅力を教えてください。

ハンガリーというより、ヨーロッパの魅力でしょうね。時間がゆったりと流れているのが良いです。「人類がすぐに滅亡するわけではないので、そんなに急いでいろいろなことをしなくても良い」ということを教えてくれますが、時にはあまりにのろいので、いらいらすることもあります。ハンガリーの魅力を上げれば、ヨーロッパの辺境にありながら、ハプスブルグの文化的伝統の中にあったので、異文化が交わっているということでしょうね。辺境における文化の混交が、面白いものを生み出します。20世紀初頭のブダペストで、20世紀の科学をリードする人材が多数生まれたことも、こういうことが関係していると思います。オノヨーコさんがハンガリーのボーイフレンドと一緒にブダペストを訪れ、生活されていたことがありますが、同じような感覚をもっていらっしゃったのではないかと思います。そういうこともあって、「異星人伝説」を翻訳しました。


マラソンを始められたきっかけは? また、何歳くらいまで走っていらっしゃると思いますか?

テニスなどは相手とコートを確保しなければできません。それが面倒になり、一人で遊べるものを探していました。一時期、テニスをやりながら、水泳に凝っていたのですが、ランニングは気軽にレースに参加できるというのが、一つの魅力でした。昔から闘争本能がありましたから(笑)。レースに参加して分かったことですが、結局、ランニングは自分との戦いだということが分かってきました。一種の「禅」ですね。究極の一人スポーツです。これが面白いですね。まだ長距離を初めて6年目です。
 通風と高血圧をきちんと治療しないまま走っていたので、ここ1年半ほどかなり体調を崩しています。今はこの持病をコントロールしながらやっていますが、体力の低下に自分でも驚いています。何時まで走れるのか。もっとも、次第にゆっくりと完走することが目標になっていくでしょうね。歩けなくなるまで走っていると思います。


「プラハ国際ハーフマラソン」


毎日どのくらい走っていらっしゃるのでしょうか?

私はハーフマラソンまでと決めています。長い距離を走るには、それなりの準備・トレーニングが必要です。レースに参加することより、その準備プロセスがはるかに大切で、面白いのです。ほかにやりたいことがたくさんあるので、すべての時間をランニングにとられたくはありません。ですから、マラソンを走るトレーニングはしていません。もう10歳若ければ、フルマラソンに転向したかもしれませんが。
 1日に走る距離は10kmほどです。レースが近づいてくると、15km走を週に1−2回いれ、20km走を2−3度行ってレースに参加しますが、今のところは年に2度しかハーフマラソンを走らないので、平均して1日に走る距離は10kmです。ただし、その日の調子によって、トレーニングの仕方を変えています。とにかく距離だけをこなすトレーニング、1kmのインターヴァルでスピード練習をするトレーニング、5kmのインターヴァルでスタミナをつけるトレーニングなどを組み合わせてやります。月間で250kmほど。
 ブダペストの道路は空気汚染がありますし、ブダ側は丘陵地帯でアップダウンが激しく、交通量も多いので、ふだんのトレーニングはフィットネスクラブのマシーンです。スピードと距離を確認しながら走れるし、天候に左右されないので、レース以外は室内で走っています。その後に温泉に入れるというのが、良いのです。


ゲレルトホテル屋外プール


盛田さんのお好きな本はありますか?

とくにありません。人の関心や興味は変化します。その変化に応じて、満足させる本を探すというのが、私のスタイルです。
私が翻訳した「コルナイ自伝」は、戦後のハンガリーの歴史を潜り抜けてきた一人の経済学者の物語として、たいへん面白いものでした。専門的な解説を行った部分以外は、一つの歴史物語として読むことができます。専門家から高い評価(「週刊ダイヤモンド」2006年ベスト経済書第9位)を受けたのですが、一般の人にはあまり読まれていないようです。
もう一つの翻訳書「異星人伝説」は、科学史上の一つの謎でもあった、「20世紀初頭におけるブダペスト現象」(何故、20世紀をリードした頭脳が集中的にこの地から輩出したのか)に一つの回答を与える書です。
 今は20世紀の社会主義とは何だったのかということに関心があります。人類最大の殺戮が行われた20世紀半ばの歴史現象をどう理解するのか。ヒットラー、スターリン以降も、人類社会はまだ大量虐殺を続けています。このおろかさはどこから来るのか。今、それに関心があります。


詳細

詳細

* 「異星人伝説」「コルナイ・ヤーノシュ」の書評

盛田さんの今後の夢は何かありますか?

残された時間で何ができるかを考えています。とりあえず、これまでハンガリー語で出版した論文をまとめて、ハンガリーで出版します。幾つかの論文はかなりの反響を呼び、テレビや雑誌の取材などを受けました。体系的に編纂し直して、「日本人が見たハンガリー社会」という視点の書籍を出版します。
 20世紀の歴史で、たとえば「ハンガリー動乱」など、誤って日本に紹介されたものなどを再検討したものを残したいというのが、夢と言えば夢でしょうか。

どうもありがとうございました。

(2008.5.21)



        
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